2013/12/03

さよならストリップ 後編

ゆののラストダンス、どんな内容か全然予想出来なかった。
飛び切り綺麗な衣装で美しく舞って終わるのか。それともゆのらしい物語を演じて終わるのか。

答えはそのどっちもだった。
それよりなにより、ラストダンスには踊り子の最後が全部詰まってた。





ライトがつく。
楽屋の設定のようだ。ゆのがストレッチをしている。かすかに舞台の音楽が聴こえてくる。進行で前の順番の人が終盤に差し掛かってきたのだろう、出番が迫って慌てて飛び出る。

設定は舞台上へと変わる。音楽はねごとのメルシールー。

(これが きっと ラストシーン)

青緑の煌びやかな衣装が揺れる。ステップを踏みながら、踊りながら舞台上を駆け回る。
誰よりも美しく、誰よりも無邪気に踊るこの姿が、大好きだった。




舞台後の楽屋へと転換する。
音楽はかりゆし58のオワリはじまりだ。
ポラロイドへサインを書いているゆのが居る。
 




(もうすぐ今日が終わる
やり残したことはないかい
親友と語り合ったかい
燃えるような恋をしたかい)

床に座り真剣にサインを書いている。きっといつもこんな風に丁寧に書いてたんだろう。
あるポラの所で、ふとゆのの手が止まる。大量のポラロイドから、二枚写真を取り出し、愛おしそうにそれを抱きしめるゆの。どんな人のポラだったんだろう。

衣装の整理をするゆの。一枚一枚眺めて、トランクに詰める。どんな思い出が詰まっていたんだろう。
会場内にそっと触れるゆの。照明、天井。舞台から見る景色はどんな風だったんだろう。
周りを見渡す。

(旅立ちの時はいつだって少し怖いけど
これも希望の形だってちゃんと分かってる
笑って「さよなら」を言えたらいいな)


ゆのが跪く。

そしてそっと、舞台にキスした。


(もうすぐ今日が終わる
かけがえのない時間を
胸に刻み込んだかい)






「さよならストリップ」という演目だった。
ゆのは、最後のストリップで、ストリッパーの最後を表現したんだった。



オープンショーが始まった。ファイヤーは本当に爆発するぐらい盛り上がった。事前にファンの方が配っていたクラッカーが鳴り響き、ありえないくらいの大量の紙テープ、紙吹雪が舞台に降り注ぐ。ゆのは最高の笑顔で踊る。
名残りおしむように、オープンショーは二度行われた。

最後、紙テープと紙吹雪で埋まった舞台、鳴り止まない拍手と声援の中、ゆのは三つ指ついて深く深くお辞儀する。

舞台に幕が降りた。
さよならストリップ。
さよならストリッパーゆの。






帰り道は、凄いものを観た興奮と、こんな凄いものがもう観れないという悲しさで、良くわからないことになっていた。
ぐわんぐわんする頭で渋谷の街を歩いた。




今になったら気持ちがまた変わってきている。
ただただ、幸せになって欲しい。

これって、どうしようないくらい好きになった人とさよならする時の、恋の終わりのような気持ちだ。
ゆのが大好きだった。どんなにたくさんの踊り子がいても、彼女を超える人はもう現れないと思う。
ストリッパーとしてのゆのとはさよならだけど、こんなに好きなった人だからこそ、ずっとずっと応援したい。

ストリッパーでなくなった彼女はどんな風に生きるんだろうか。
たまに機嫌が良い時、軽いステップでクルリと回ったりするのだろうか。
きっとストリッパーでなくても、その姿は美しいだろう。

幸せであったらいいなと思う。